あの夜消えた火、つけた火。
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53 :長文スマソ :02/12/06 03:07
学生時代。今から数年前の11月。
大学4年の秋。ゼミで一人の女の子と仲良くなった。
俺は惚れた。卒業を間近に控えながら、内定はゼロ。
でもどうでも良かった。
いまだかつて、こんなに人を好きになったことはなかった。
その子には、3年間続いている彼氏がいた。遠距離恋愛だった。
しかし俺には関係なかった。俺は、何度もその子に気持ちを伝えた。
彼女は、以前から彼氏との遠距離恋愛に限界を感じていたこともあり、
俺へ気持ちが傾き始めていた。
彼女はタバコが嫌いだった。
だから俺はなんの躊躇もなく禁煙した。
マルボロライト。
やめれる自信はあったし、実際、禁煙は苦じゃなかった。
親友のSは俺の禁煙を見て
「ほな、俺もお前と一緒にタバコやめるわ。前からやめたかってん。ええ機会や」と
笑いながらタバコとライターを捨てた。
12月のある日、俺は彼女に「答えがほしいねん」と言った。
彼女は「T君(俺)と付き合うかどうか、まだ迷ってる。でも、彼氏とは別れてくる。
その後に答えを伝えるから待ってて」と言い残し、遠く離れた彼氏に会いに行った。
俺はじりじりしながら、待った。
数日後、彼女は戻ってきた。俺の部屋に来て、とりとめのない話をした。
そんな話、頭には入らなかった。俺は「答え」だけが気になっていた。
でも、俺は聞けなかった。数十分後、彼女から切り出した。
「別れてないねん。だからT君とも付き合えへん。ごめん」。
彼女は本当に別れるつもりで彼死に会いに行った。
でも、実際に会ってしまったことによって、
情が湧いてきてしまい、別れを切り出せなかった。
そして帰ってきた。
それから数日、彼女と電話やメールをした。
最初は「このままでもええかな」と感じていた。でも、耐えられなかった。
もう、限界だった。
彼女と話をすればするほど、気持ちが高ぶった。壊れそうだった。
そして彼女も、無理をして俺と話してくれているのがよくわかった。
ある夜、彼女と携帯で話しながら、俺は決断した。
彼女に言った。「この電話で、最後にする。メールももうしいひん。
履歴も、メモリーも全部消すわ」。
あえて、冷たい口調で言い放った。
彼女はただ一言「わかった」と言った。
全てを悟ったように、それまでの甘い話し振りが一転、向こうも冷たい口調だった。
俺は、「じゃあ」と言って携帯を切ろうとした。
いつもなら右手の親指で簡単に押せるはずのOFFが押せなかった。
左手を無理やり右手に添え、ようやく切った。
携帯を切るのにこれだけ意志の力が必要だったのは初めてだった。
携帯を切ってしばらく、何も考えられなかった。
そして涙があふれてきた。
止まらなかった。女に振られたことは何度もあったが、泣いたのは初めてだった。
10分、いやもっと過ぎただろうか。
涙が少し乾いた頃、ふと「タバコ吸いたい」と思った。
禁煙を誓い合っていたSに電話した。
Sは俺と彼女のことを知っていた。
だから俺が「何にも聞かんと、タバコ買うて来てくれへんか。頼むわ」と言うと
全て事情を察したようだった。
Sは「わかった」それだけ言って電話を切った。
しばらくしてSが来た。
無言でタバコを差し出した。
俺も何も言わずマルボロライトを受け取った。
禁煙してたかだか2ヶ月も経ってないのに、
タールの匂いがすごく懐かしかった。
火をつけ、深く吸った。
深く深く吸った。
息を吐いた。
部屋中に、煙がたちこめた。
俺は心の中で、「あぁ、禁煙の誓い、やぶってもうたなぁ。
Sの勝ちやなぁ」と苦笑いしていた。
ちょっと自己嫌悪に陥った。
その様子を何も言わず見ていたSが、「俺も吸おっかなぁ」。
普段クールなSに似合わないくらい、おどけて言った。
そして、Sもタバコに火を付けた。
Sも俺と同時に禁煙を破った。
「あ、俺もタバコやめれんかったわ。おあいこやな」。
俺はまた、涙が止まらなくなった。
Sに見せまいと、顔を壁に向けてこらえたが、泣けてしょうがなかった。
必死に平静を装ってタバコを吸い続けた。
あの夜、叶わぬ恋の辛さを知った。親友のありがたさを知った。
そしてあの一本のタバコの味は一生忘れられなくなった。
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Posted by 神谷 at 15:11
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