そして、とどいたことば。
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169 名前:777 ◆Sx777J2Ch. 投稿日:03/05/13 02:55
親父に会ってきた。その見た目は壮絶だ。
鼻の穴に管が差し込まれ、その管は常に血を吸い出している。
息をするのがつらいためか、それとは別にさらに両方の鼻の穴に
酸素を吐き出す管が刺さっている。点滴はもはや腕からではなく、
胸あたりに刺さりダイレクトに栄養を送り、
痛み止めのモルヒネもどの管からか常に入っているらしい。
親父の身体に一体何本の管が入っているのか・・・という状態だ。熱があるらしく、
ひたいにはアイスノンが巻かれている。
空気の漏れる音や、血を吸い込む音、
耳をすませると親父の生命を維持するためにいろんなマシンが動いている。
ふと下を見ると血液吸い込みマシンに、親父から吸い出した血液が
1リットルもたまっていた。朝からオレが到着した夕方までの間にこんなに出たんだ・・・。
だけど、数日前よりも元気だという。
濃いモルヒネを打っているせいでたまにワケのわからないことを言う以外はまともに話もできる。
ベッドの上であぐらをかくこともできるようだ。
「このおかげ(血液吸い込みマシン)で、ずいぶん楽になったんだよ。これでどんどん元気になるぞ」
と親父はオレに言った。自分ではそういう意識を持つことが大切なんだろう。
ここまで来たらあとは前向きな気持ちとか
生きるという強い意志などのメンタルな部分が大事になってくるはずだ。
だから、まだまだ生きるつもりの親父に
「いままでありがとう」なんてとても言えない。
寝ている親父の手を握ってみた。
「温かい手だな」
と親父は言った。
オレが
「よく腕相撲したよな」
と言うと
「そうだな、もうお前にはかなわないよ」
と小さく言って
オレの手を握り返してきた。予想を遙かに上回る強い握りだった。
病気でなかったら今でもかなわないんじゃないか、
と思うほど強い強い握力だった・・・。
「会社は大丈夫か? 」
と聞かれたら
「最近、業績いいんだよ」
と嘘をつき、
「嫁さんはお前に不平不満を言ってないか?」
と聞かれたら、
「あぁ、仲良くやってるよ」
と答える。
親父に伝えるオレの人生は全部絶好調状態だ。
親父には一切不安を抱かせない。
1時間ぐらいいると「早く仕事に戻れ!」と言う。
「いや、別に今日は仕事しないよ」と言うが、いいから行けと言う。
実際は締切日でどっちにしても長居はできなかった。
「また一週間後来るよ」
と言って、親父と握手し、母と一緒に病室を出た。
母と話しながらエレベーターの前まで歩いて思い出した。
「ちょっと戻る」
と母に告げきびすを返し、
一人で病室に戻った。やっぱり今日言っておかなきゃだめだ。
親父のベッドのそばに戻り、
親父の手を握り、
「元気だせ」
「早く良くなってな」
「来週は女房と一緒に来るぞ」
とかいろいろ言い、
最後に親父の手を自分のひたいに付けて言った。
「生んでくれてありがとう」
伝えたいことはだいたい話せたような気がする。
なんだか胸のつかえが取れた気分だ。
そして、病室を出てそのまま会社に戻り、
今も仕事をしている。オレはオレで生きるのだ。
171 名前:777 ◆Sx777J2Ch. 投稿日:03/05/13 03:07
上の文章の翌日に、亡くなられたとありました。
月並みだけど御冥福を祈ります。
そして、「生んでくれてありがとう」という言葉、間に合ってよかった。
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Posted by 神谷 at 14:11
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