2D格闘ゲームの系譜
05/07/09
1.はじめに
まこなこさんの現在のアーケードゲーム業界と業務用対戦格闘ゲームの状況というエントリでの
これはゲームセンターで置いてもらうよりかは、この手の物が好きな層が基盤を買ってくれることを見込んでのことだろう。
という下りに関して,神聖マルチ王国さんがメルブラACがアーケード業界にもたらしたものとは?というエントリで反論していた.
メルブラACがユーザに好評と共に受け入れられた理由について,当方もおおむね神聖マルチ王国さんの意見と同じ立ち位置なのだが,それに加えて,その稼働開始時期がコンボ系格闘ゲームとでもいうべきジャンルの,一つの谷間にあった事が挙げられると考える.
ここで,「コンボ系格闘ゲーム」という言葉を唐突に用いたが,当方は現状の格闘ゲームはおおよそ
・駆け引き系
・コンボ系
・中間
の三つに分類でき,それぞれにある程度の固定ファンが付いていると考えている.
これらの具体例を挙げるならば,駆け引き系としては3D格闘ゲーム全般が,コンボ系としてはGGXX系列やメルブラACが,中間のものとしてはカプコンファイティングジャムが挙げられる.
しかし,格闘ゲームの歴史を遡った時,STREET FIGHTER 2に辿り着く事は間違いない.
よってここでは,上記3つが明確に分岐するキッカケとなった,コンボ系格闘ゲームの最初の完成系であるX-MEN VS. STREET FIGHTERに至るまでの格闘ゲームの歴史を,特に「カプコンのゲームに注目して」ゲームシステムの進化に注目して述べ,またコンボ系格闘ゲームそれ自体について考えてみたいと思う.
以上前振りの前振り終わり.
2.格闘ゲームというフォーマットの成立
90年代後半の格闘ゲームのブームを遡ったとき,先程述べたように,その始まりがを追いかけたとき,STREET FIGHTER 2に行き着かざるをえない,という事に異論は無いと思う.
ただ,「ゲームシステム」という観点から考えるならば,その前作であるSTREET FIGHTERまで遡る必要がある.
STREET FIGHTERの稼働は1987年.
具体的にSTREET FIGHTERで実装されていたシステムは以下の通り
・パンチとキックボタンによる攻撃手段の完全な分化
・ボタンを押す強さによって変化する攻撃内容(弱中強攻撃)
・体力ゲージ制
・ラウンド制
・2ラウンド先取制
・必殺技
・ガード
・レバー上によるジャンプ,レバー下によるしゃがみ状態への移行
これらからSTREET FIGHTERの時点で「格闘ゲーム」としての基本的なゲームシステムは完成していた事が分かると思う.
また,この時点では,敵として現れるキャラクターがそれなりにいるにも関わらず,同一性能であるリュウ対ケン以外の対戦は許されていなかった事を述べておく.この事は,対戦をこの時点では重視していなかったことを示している.
また,稼働からしばらく経った頃,ボタンを2つから6つに増やし,弱中強のパンチ・キックを容易に使い分けられるようにしたモデルもあったようである.
おそらくオペレーターサイドからの不満,つまり
「客がバンバンボタン叩くから,ボタンが壊れやすくて仕方ないのでどうにかしてくれ」
といったような不満から現れたのではないかと考える(同じようなシステムを採用していたベラボーマンはよく壊れていた)
よって中期以降のSTREET FIGHTERによって
・6ボタン
というシステムも確立され,これによって「ボタンを押す強さ」という曖昧さ,不確定要素が排除され,厳密なプレイが可能となった..
さて,この4年後の1991年,これを発展させたシステムで,STREET FIGHTER 2が稼働を開始するが,STREET FIGHTER 2において新しく実装されたシステムは以下の通り
・8人の選択可能な性能の異なるキャラクター
・連続技
・通常技キャンセル必殺技
まず,性能の異なるキャラクターを用意することで,状況ごとの互いの有利不利が現れる事になった.
これによって,それまでの同一キャラによる対戦で起きていた,最も有効な戦法が一意に定まる事によって起きる,「互いに有効な戦法以外を取らない千日手(例えばマリオブラザーズでPOWブロック取り合いや,相手よりも常に下を取ろうとした結果,延々最下段に居る事になる等)」が排除され,自分に有利な状況を作り上げようとする,「リアルタイムな戦術」という概念が発生し,このことはゲームとしての幅が急激に広くなった事を表している.
そしてこの事は,それまで「公平な対戦」の名の下に互いの性能が同一であることが当然であった対戦において,これは一つの革命であったと言える.
無個性とも言える状態に対して,予めキャラクターの性能,見た目を変化させる事で プレイヤーが「個性」を表せるようになった事は特筆すべきであろう.
例:
「なんでブランカ使ってんの?」
「人外やから」
俺の話だが.
2つ目として連続技,いわゆる
ジャンプ強キック>しゃがみ弱キック>波動拳
に代表される「一撃目が入れば回避不可能な連携」という概念が発生した.
但しこの時点では「高ダメージを与える手段」という認識のみで構成されていたことを付け加えておく.
最後に,これがバグから発生したことは有名であるが
強パンチ中に昇竜拳のコマンドを入れると,強パンチの戻りがキャンセルされて
昇竜拳が出る
という通常技キャンセル必殺技という概念である.
これによって「通常ならば繋がらない筈のコンボを,通常技でキャンセルすることで強制的に繋げる」ことが可能となり,これが後々チェーンコンボや必殺技キャンセルEX必殺技へと繋がっていく.
そしてこのSTREET FIGHTER 2のゲームシステムが,この後それこそ雲霞のごとく出現する格闘ゲームの(ボタンの増減やキャラクターの多寡はあるものの)スタンダードなシステムとなる.
しかし,こうしてシステムの基本フレームは完成したものの,ここでシステムの進化は一旦停滞する.
スト2ダッシュやSUPER STREET FIGHTER(スパ2)などのマイナーチェンジはあるものの,目立った進化を遂げていない.
キャラクターが増え,コンボが表に出る(ヒット数の表示)ようになった程度である.
そして1994年,ゲームシステムにおける進化の爆発が始まる.
以上,前振り終わり.
3.革新と完成と分岐
1994年は2D格闘ゲームにおける一つの転機である.
それまでSTREET FIGHTER 2のマイナーチェンジに終始していたカプコンが,様々なシステムを導入し,そしてそのことごとくが現在のコンボ系2D格闘ゲームに無くてはならないシステムであった為である.
1994年3月,STREET FIGHTER 2シリーズにのゲームシステムに,一つの変化が訪れる.
スーパーコンボの導入である.
これを1992年に稼働を開始した「龍虎の拳」の超必殺技(覇王翔吼拳等)の系譜と見なすか,それともSTREET FIGHTERでの,まさに「必殺」の名に相応しい,「必殺技」の復活と見なすかは人それぞれである為,この辺りの考察については省略するが,
・ゲージが溜まるまでに時間が必要
・使用するとゲージがゼロに戻るため乱発が不可能
という性質から,ゲージが溜まった瞬間から,戦術の組み立てがスーパーコンボを含めたものにシフトする,というそれまでとはまた別の戦術の広がりを与えたことは特筆すべきであろう.
そして,ゲージを消費して必殺技の上位互換を撃つ,という概念は,これ以後のカプコン製格闘ゲームの殆どに継承されていくことになる.
そしてその四ヶ月後の7月,ヴァンパイアが稼働を開始する.
このヴァンパイア新しく導入されたシステムは
・ガードキャンセル
・ダッシュ
・チェーンコンボ
の三つである.
まずガードキャンセルによって,コンボの開始となる攻撃をガードしてしまうと,コンボの終了まで防御側は一切反撃が出来ず,また所謂「固め」によって防御側が詰んだ状態になる,といったような,それまでの格闘ゲームの問題点を解消された.
次にダッシュについてであるが,元々これは龍虎の拳に導入されていたこのシステムであるが,キャラクターごとにダッシュの性質を変える,ダッシュ中に一部の攻撃が変化する,というアレンジを含めることで,移動のスピードアップと共に,飛び込み以外の相手への接近手段の確立,つまり
ジャンプ攻撃>立ちorしゃがみ攻撃>必殺技
に限定されていたものが
ダッシュで接近>チェーンコンボ
といった手法が可能となり,コンボの幅を広げる事になり,またこれは,それまでの「とりあえず昇竜拳」に対する一つの解答でもあろう.
そして,通常技キャンセル通常技による連携であるチェーンコンボは,通常攻撃のみで成立する連続技という概念だけでなく,「コンボを叩き込む楽しさ」を生み出した.
自分のボタン操作によって,「長時間にわたって一方的に相手を攻撃し続けられる」という事は,それまでに無かったものであり,またそれまで「勝った時」以外に存在しなかった快感に「連続技を思うがままに叩き込んだ時」というものを加える事になる.
そして,この一方的な蹂躙の快感こそがコンボ系格闘ゲームとそれ以外を分ける一つの指標となる.
更にその5ヶ月後の12月,X−MEN -CHILDREN OF THE ATOM-(以下X-MENと表記)が稼働を開始する.
このゲームは,正直なところパっとしなかった印象があるが,このゲームで初めて実装された,たった一つのシステムは,現在においても極めて重要な.意味を持っている.
エリアルレイブである.
相手を当たり判定を保持したまま空中に打ち上げ,空中でコンボを叩き込むエリアルレイブ(これがその名で呼ばれるのはもう少し後だが)は「コンボを叩き込む快感」を更に拡張すると共に,それまで空中>地上であった連携に,地上>空中という逆の経路を与えた.
またシステムというほどではないが,このゲームでの超必殺技,ハイパーXは,のちのゲームにおける,超必殺技の演出の派手さという点に,非常に大きな影響を与えている.
このように,短期間の内に様々なシステムが現れた為,ユーザの多くは
「この全部のシステムを放り込んだらどうなるのだろうか」
と考えた.そしてこれらに答える形で,これら全てのシステムを導入した,最初のコンボ系格闘ゲームが開発された.
それがX-MEN VS STREET FIGHTERである.
しかし,様々のシステム全てを導入したことで,X-MEN VS STREET FIGHTERは非常に偏った,バランスが取れているとはお世辞にも言うことの出来ないゲームとなった.
一度主導権を握ればひたすらに相手を押さえ込むことが可能で,その間に一撃でも相手に攻撃が入ればチェーンコンボから打ち上げへ繋ぎ,エリアルレイブで空中連続技を叩き込み,それを必殺技で締め,更にそれをスーパーコンボの発展系であるEX必殺技でキャンセルし最大ダメージを叩き出す.
逆に押さえ込まれた側はひたすらしのぎ,運良く相手の攻撃が途切れたならば,その合間を縫って,ガードキャンセルやEX必殺技の無敵時間で反撃を行い主導権を奪い取る.
当然問題点は無数にあった.
全キャラに永久コンボがあったことなどはその極みだろう.
だが,それを差し引いても「やりたいことがやりたいようにできる」というシステムは,ユーザに歓喜をもって迎えられた.
「ここでこうできたら」という欲望を,忠実に満たしたものが受け入れられない筈が無い.
そしてこのゲームを以て,格闘ゲームはコンボ系と駆け引き系,そしてその中間という三つの流れに明確に分化したと考える.
現状稼働しているゲームの例で挙げるならば,それぞれメルブラAC,バーチャファイター4,侍魂であろうか.
さて,ではコンボ系と駆け引き系の違いをもう少し述べてみよう.
抽象的な表現をするならば,前者が自分にとって有利な状況をいかに「押し付けるか」であるのに対し,後者はいかに自分にとって有利な状況に「引きずり込むか」である.
もう少し具体的な書き方をすれば,ガードキャンセルは基本的に駆け引き系にはない事が挙げられる.
ガードキャンセルは,成功すれば大抵相手は転び,成功させた側が有利になる.
これが示すのは,攻撃側と防御側の明確な役割分担である.
攻撃側は,自分が転ばされる,もしくは間合いが十分離れるまで攻撃側で,転ばされたならば防御側に移行し,間合いが十分離れたならば中立状態になる.
これに対して,駆け引き系は,攻撃側は常に最大のリスク,例えば防御側がガードしていた攻撃側の連携に割り込み,上段攻撃を抜けての下段からの打ち上げを決めるなどの危険が常に伴う,つまり攻撃側と防御側の役割分担が常に流動的であることが挙げられる.
また,駆け引き系とコンボ系はバランス調整をする場合にも大抵違いがある.
これに対して前者が強い部分,キャラクターを積極的に弱体化することで,平均値を現状と変えぬままにバランスを取ろうとするのに対し,後者は目に余るモノ以外は,強い部分,キャラクターは修正せず,むしろ弱い部分,キャラクターを底上げし,全体としての平均値を上げつつすることでバランスを取ろうとする.
これらが駆け引き系とコンボ系の違いであり,駆け引き系が3D格闘ゲームに多いのは,正に駆け引きと言える,相手の下段攻撃を小ジャンプでスカす,バックステップで相手の膝蹴りを避ける,などの現実的な駆け引きを細かく実行可能にしようとしたとき,その実現にはリアルタイムな演算が必要となり,ならば最初からテクスチャーマッピングで構築した方が効率が良い,という極めて現実的な理由に依ると思われる.
つまり,本質的に駆け引き派が求めるのは大量の変数であり,その変数があまりに膨大なとき,それらから生み出される全ての状況を絵で表現する場合,一々ドット絵を描くよりもポリゴン処理を行った方が圧倒的に楽になる,という事である.
余談であるが,トップレベルにおいては,「いかに後に繋げられる一撃を当てるか」という一点に焦点が絞られ,コンボ系は駆け引き系に吸収される為,これらの分類は実はそれほど意味がない事も述べておく.あくまで印象レベルに留まる.
ただ,最初からある程度のバランスの破綻を認めるか,それとも徹頭徹尾制作者のせいていないでのバランスに終始するか,という違いだということも,また重要であろう.
さて,X-MEN VS.STREET FIGHTER以降,カプコンはコンボ系のVS.シリーズと,駆け引き系であるSTREET FIGHTERシリーズ(特にIII以降)と,その中間であるヴァンパイアハンターに代表されるそれ以外の格闘ゲーム,という棲み分けを始め,またユーザもある程度の棲み分けを行うようになった.
そして,これらの内,駆け引き系はほぼ完全に3D格闘に取って食われ,それ以外の格闘ゲームは特色が無いという評価によって市場的に失敗し(システムが進化していないから当然ではあるが.他社ならばKOFと侍魂が生き延びているくらいか)ている.
そしてコンボ系の系譜はQOHやGGX,そしてカプコンのVS.シリーズによって維持され続けてきた.
メルブラACがウケた理由はこのコンボ系の直系であり,またGGXXシリーズの谷間(ぶっちゃけイスカは失敗だろう)であったことと無関係ではないと考える.
コンボ系格闘ゲームという支持層が既にあり,そして一時的な冬の時代を迎えていたコンボ系格闘ゲームの要求に応える形でリリースされたこと,そして月姫という媒介を経てメルティブラッドというコンボ系格闘ゲームの最右翼に接した,新規ゲーマーが呼び込まれた,という3つの要素からヒットに繋がったのではないかと考える次第である.
最後に,ゲームシステムにおける進化の系譜を図で示してこのエントリの終わりとしたい.
追記:エリアルレイブに関してツッコミが入ったので書いておく.
確かに「エリアルレイブ」というものがゲームシステムとして公式に組み込まれたのはX-MENより後ではあるが,エリアルレイブ成立のキッカケとなったのは間違いなくX-MENであるのでX-MENからエリアルレイブが始まった,と定義した.
分かりやすく書くと,これを「マーヴルスーパーヒーローズ」からと書いてしまうと,全てのゲームシステムについて,それが「公式にシステムに組み込まれた時点をそのシステムが現れた時点」と定義することになって,
「連続技という概念が出てきたのはコンボ表示がされるようになってから」
「通常技キャンセル必殺技はスト2の時点ではバグでごく一部の技にしか適用されないので,出てくるのはもっと後」
といったような妙な状況になるのであるな.
そういえばX-MENの攻撃全てにベクトル量を与えて相手の吹っ飛びを制御している云々ってのは,微妙に3D格闘ゲームに擦り寄っておるのう.
以下,余談
基本的に上ではカプコンの格闘ゲームについてのみ述べているが,これは単純にKOFに代表されるSNKの格闘ゲームのシステムは,カプコンのそれの後追いが多く,それほど特筆すべきシステムが無いためである.
おそらくSNK系で重要なのは,
・怒ゲージや途中からKOFに採用されたゲージを消費しての基礎能力の底上げ
・避け
の二点だけではないかと思う.
ただ,後者の「相手の攻撃を読んでスキを作らせる」という行為は,疑似3D的なものであり,2Dでの駆け引き系の最たるモノではあろう.またこれは後々STREET FIGHTER 3で,ブロッキングとして採用されている.
前者についてはなんとも言い難いが,そういえばストゼロ3のZ-ISMのゲージマックスでの攻撃力増加(5%だったっけ?)はこの系譜か.
正直なところ,カプコンほど無茶なシステムを構築してないから喋りにくいのであるが.しかし,格闘ゲームを作る会社が減ったのう・・・
と,ここまで書いて気づいたが,こういうのこそwikiでやるべきもんではないかと思う次第.
作ったら書く気のある人いる?
参考文献
年代関係
Wikipedia
カプコン公式
はてなキーワード
システム関係
前記の参考文献に加えて
当方の記憶
高校の時からのツレの記憶
株式投資 イートレード証券
Track Back URL: http://s03.2log.net/editor/tb.php?id=singbrain:blog:189
Track Back
トップに戻る
( ・∀・)つ〃∩ ヘェーヘェーヘェー
Posted by rgy at 05:23